2011年06月30日

沖縄への鉄道導入可能性

内閣府がアンケート調査を元に沖縄の鉄道需要予測を行ったそうだ。
これによると、「本格的な」鉄道と、LRTやBRTのような路面系に分けて需要調査を行ったという。上記沖縄タイムスより1日遅れで報じた琉球新報がやや分かり易く数字を纏めている。区間によって数字が違うので、路線全体の輸送量ではなく断面輸送量を各地で予測しているということのようだ。その意味では既存鉄道でよく出てくる数字である輸送量や輸送密度とは比較がしにくく、「○○鉄道より優れている」といったことが言い難い(断面輸送量のデータが多ければ推定出来るが)。

基本ルートは沖縄市や具志川といった中部の人口密集地を経由するものと、国道58号に沿う形となる、中北部のリゾート地輸送を重視したルートBがあり、前者が地元民、後者が観光客の利便に優れるものの、そもそもの需要は地元民が圧倒的に多いのでルートAが有利。高速鉄道か路面系かという観点では、前者が高速ゆえに長距離、後者が短距離の需要をより多く開拓出来るが、前者の潜在需要の方が多い。但し、ルート・鉄道の種類共に、需要が多く見込まれる方が建設コストが嵩むので、費用対効果ではどちらが優れているか分からない。

実際に導入を検討するなら、高速鉄道かLRTかという二者択一で考えてしまうのは勿体無い。既存鉄道網との関係(直通運転等)を考慮する必要がある内地であればそのような発想になろうが、今回は沖縄だけに最適化した輸送体系を考えれば良い。そもそも全国有数の人口密集地を走ることになるのだから、高速鉄道案を採用した場合にその用地買収は困難を極めることが予想される。市街地では用地買収が困難である一方、停車地の需要も高い。また、道路が市街地の中央を通っているので、路面に鉄道を通せば中心部に駅が設置出来る。路面走行ではスピードが出せないが、市街地で駅間距離が短ければ影響は比較的小さい。このような観点で高速鉄道と路面電車を組み合わせたものを考えてもいいだろう(それは結局LRTではないか…)。また、このようにすることで長期的には専用軌道とすべき箇所でも鉄道導入を早めることが出来、1箇所の用地買収が滞ったがために全体の開通が遅れるという事態も避けられる。

ところで、導入空間の一部は、返還された米軍基地跡地、とりわけ普天間基地跡地を想定しているのかも知れない。この時期に鉄道導入可能性の検討が本格化しているのは、普天間移転後の具体的な振興策を示すことで、辺野古移転を進めるための「アメ」をちらつかせていると考えられる。普天間基地は返還されるべきものなのでその跡地を想定して検討することは妥当だが、それが辺野古移転と抱き合わせになることは、沖縄のみならず国家全体の損害であるから何としても避けねばならない。

車両の面でも、LRTなら低床電車に拘る必要は無い。低床電車は車内空間が狭くなり、長距離乗車では快適性に難がある。都電方式で電車の床を高くして地上側で相応の対策を施すことにすれば、同じ大きさの車両でも車内空間を広く使うことが出来る。低床化がトレンドであるバスの世界でも、その究極の進化形とされるBRTが高床車両とプラットホームの組み合わせであることが示唆的だ。

また、検討には3つの支線も俎上に上がっている。このうち南部の2路線は記事中の扱いが小さいが、名護本部線は「日常利用は見込めないが観光客の1日1万人が見込める」とある。ここで、支線をどういう形態にするかが問題となる。本線から直通運転する路線とするならば鉄道の意味はあるが、乗り換えが必要なのであればバスでも利便性は変わらない。そして、この程度の需要であればバスの方が低コストで高頻度運転を行うことが出来、その点では利便性が高くなる。バスでは時間が掛かるという問題についてはPTPSのように今すぐ実現可能な施策もある。

鉄道の最大の長所は「地図に載る」ことかも知れない。バスは分かり辛く、酷い場合は来訪者に存在すら知られないために利用されない。この検討が進んで鉄道が導入されることになっても、それは長期戦だ。鉄道が導入されるまで、また、導入されない地域のためにも、バスの利便性をどのように向上するかも合わせて考える必要があろう。
23:41 | Comment(0) | 交通
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。